カタカナ英語

クラスター・オーバーシュート・ロックダウンって海外で通じるの?

新型コロナウイルスの感染拡大(the spread of coronavirus)が、いまだ収束する兆しが見えず、非常に不安な毎日をお過ごしかと思います。

日本でも感染拡大が急激に広がったのは3月からですが、その頃からメディア等で、クラスター、ロックダウン、オーバーシュートという言葉が盛んに使われ出しました。

小池都知事も会見等で何度も使っていたので、テレビで目にした方も多いと思います。

この「クラスター、ロックダウン、オーバーシュート」という英語は、果たしてネイティブに通じるのでしょうか?

クラスター・オーバーシュート・ロックダウンって海外で通じるの?


ロックダウン(lockdown)
オーバーシュート(overshoot)
クラスター(cluster)

結論から言うと、それだけでは通じません。

特にオーバーシュートやクラスターは、ウイルス用語でも医学用語でもありません。

メディア等のせいで、最近クラスターと聞くとすぐにコロナウイルスを連想する人が多いようですが、「クラスター」と聞いてウイルスを連想するのは、カタカナ英語を多用する我々日本人だけです。

これらの英語は一般的に、

都市閉鎖
爆発的患者急増
感染者集団

と日本では解釈されていますが、アメリカや英国では滅多に使わない言葉なんです。

これらをいきなり文の中で使っても理解してもらえない確率が高いので、どうしても使いたい時は、必ずコロナウイルスの話題の中でだけ使うようにしましょう。

クラスターはウイルス用語ではない


「クラスター」と聞いて、すぐにコロナウイルスを連想するのは我々日本人だけです。カタカナがひとり歩きしてしまったからです。

本来は「集団、群れ」という意味だけ。全然ネガティブな意味はなく、しかもネイティブが会話で「あそこに若者のcluster(集団)がいるからうるさいね」などのように日常使う単語です。決してウイルス関連の単語だと誤解しないようにしましょう。

英語でclusterと言うと、ネイティブがイメージするのは「同一種類の群れや集団」です。

例えば、子供が一か所に集まって遊んでいる場面や、海の中で群れで泳いでいる魚たちをイメージするわけです。

また、昔から使われている用語なのでご存じの方もいると思いますが、パソコン用語で、ハードディスクのクラスターなどもありますね。

したがって、clusterという単語はウイルス用語でも医学用語でもありません。

単なる「群れ、集団」の意味だけなので、仮に There was a cluster in Shibuya(渋谷でクラスターがあったよ)などと言っても、「何の集団(群れ)のこと?」と思ってしまい、ピンと来ないわけです。

このclusterを文の中で使いたい場合は、コロナウイルスの話題の中でのみ使うといいでしょう。

It takes one sneeze or one case to create a cluster.
(1回のくしゃみや1人の感染者だけでも、クラスターが出来てしまいます)
One case can lead to a large cluster of coronavirus cases.
(感染者が1人いるだけでも、コロナウイルスの大きなクラスターになる可能性があります。)
Infection clusters are forming in hospitals too.
(感染クラスターが病院内でも起こってきている)

オーバーシュートは文字通り「シュートし過ぎる」

overshootと聞くと、ネイティブは文字通り「over + shoot」の意味を想像してしまいます。

サッカーなどで、ゴールに向かってシュートして、そのボールがゴールを超えて行き過ぎる、というイメージです。

あるいは、戦艦から敵に向かって大砲を打ったが、弾が通り過ぎて外れる、といったイメージ。

なので、彼らがovershootと聞いて普段想像するイメージは、全くウイルスとは関係ないわけです。「爆発的患者急増」からはかけ離れていますね。

これと似たような意味のことを言いたいときは、outbreakやpandemicという単語を使って、次のように言うとよいでしょう。

There's been a major outbreak of coronavirus in Tokyo.
(東京ではコロナウイルスの爆発的感染があったようだよ)
It's been becoming a pandemic in Tokyo.
(東京では大流行してきているよ)

ロックダウンは本来「封鎖、閉鎖」の意味

「ロックダウン」はウイルスの話題の中で使えば通じますが、本来lockdownといえば、大半のネイティブは「建物の中に人を閉じ込めること」を想像します。「監禁、閉鎖、封鎖、幽閉」のようなイメージですね。本来はウイルスとは全く関係のない意味だったわけです。

ところが、今回のコロナウイルスの世界的感染で、今年になって世界中の人々が新たにこの単語を使い始めたという経緯もあり、いわば「英語圏の新語・流行語」のようになっているということです。

通じる人もいれば通じない人もいるということですね。なので、普段の会話ではあまり使わないことをお勧めします。

それでも、lockdownをどうしても使いたい場合は、以下のように使うとわかりやすくなります。

The whole country is under lockdown because of the virus crisis.
(このウイルス危機のために、今は国中がロックダウンされています)
London went into lockdown and most stores and office buildings are shut down.
(ロンドンはロックダウンに入りました。ほとんどのお店やオフィスビルは閉鎖されています)

また、他の表現として、

a stay-at-home order
(皆家にいなさい、という指示)

という単語が使われることが多いです。

We're under a stay-at-home order in California.
(カリフォルニア州では、在宅命令が出ています)

あとがき

繰り返しになりますが、lockdown, overshoot, cluster はウイルス用語でも医学用語でもありません。元々の意味をきちんと知っておくことが大切です。

ちなみに、「コロナウイルスに感染する」を英語で言うときは、難しく考えず、なるべくシンプルに表現します。

get coronavirus

これだけでOK。「infect」という動詞を使って get infected with coronavirusとも言えますが、長くてめんどくさいですよね。ですのでネイティブも大抵はシンプルな言い方で表現するわけです。

Did anyone in your office get coronavirus?
(社内でコロナに感染した人はいる?)

のように使います。